Pace Galleryが大規模再編へ。所属作家約50組とスタッフ50人を削減、「メガギャラリー」モデルを見直し
世界有数のメガギャラリーとして知られるPace Galleryが、所属作家約50組とスタッフ約50人を削減する大規模な事業再編を発表した。市場環境の変化を背景に、「メガギャラリー」モデルの見直しを進める。

世界有数のメガギャラリーとして知られるPace Galleryが、所属作家約50組とスタッフ約50人を削減する大規模な事業再編を実施することが明らかになった。
この動きは、6月3日に『ニューヨーク・タイムズ』が報じたもので、その後「ARTnews」や「artnet news」などのメディアも詳細を伝えた。Paceは現在約135組のアーティストおよびエステートを扱っているが、今後は約85組にまで縮小する予定。また、約250人いたスタッフも約200人へと削減される見込みだ。
1960年創設のPaceは、アレクサンダー・カルダー、マーク・ロスコ、アグネス・マーティンのエステートをはじめ、デイヴィッド・ホックニー、ジュリアン・シュナーベル、アダム・ペンドルトンなどを擁する世界有数のギャラリーとして成長してきた。現在はニューヨーク、ロンドン、ジュネーヴ、ベルリン、ソウル、東京などに拠点を持つ。
ギャラリーを率いるマーク・グリムチャーCEOは、「現在のギャラリーモデルは壊れているだけでなく、もはや修復不可能だ」と述べ、急速な拡大路線からの転換を打ち出した。
今回の決定について、グリムチャーは「アートギャラリーのシステム全体が大きくなりすぎ、商業化しすぎ、非人間的で企業化しすぎた」と説明。「ギャラリーには『モデル修正(model correction)』が必要だ」と語り、少数のアーティストとの関係性を深める方向へ回帰する考えを示した。
背景には、コロナ禍以降続く世界的なアートマーケットの減速がある。近年は高金利やインフレ、地政学的リスクの高まりに加え、運営コストの上昇がギャラリー業界全体を圧迫しており、中小ギャラリーの閉廊や統合が相次いでいる。Paceのような大手ギャラリーも例外ではなく、多拠点運営やアートフェア出展に伴う高額な固定費が重荷となっていた。
ARTnewsによれば、Paceは近年、ベルリンでの共同スペース開設や二次流通事業「Pace Di Donna Schrader Galleries(PDS)」の立ち上げなど新たな試みを続けてきた。いっぽうで、体験型アート施設「Superblue」からの事実上の撤退、香港およびパロアルト拠点の閉鎖、サザビーズとの提携構想の中止など、事業の見直しも続いている。
また、ニューヨーク・チェルシーにある8階建ての旗艦施設は維持する方針で、年間約900万ドル(約14億4000万円)の賃料が発生するものの、グリムチャーは「原点に立ち返ること」を強調している。今後も新たなアーティストやエステートの受け入れは継続するが、より慎重な選定を行うという。実際、今年にはコンスタンティン・ブランクーシのエステートやアニカ・イの参加が発表されている。
削減対象となったアーティストの全容は公表されていないが、ARTnewsおよびartnet newsの調査によると、チームラボ、高松次郎、劉建華(リュウ・ジェンホァ)、グレン・カイノ、JR、グラダ・キロンバ、ラファエル・ロサノ=ヘメル、ジョン・ジェラードらの名前がウェブサイト上の所属作家リストから外れていることが確認されている。
Pace創設者のアーン・グリムチャーもニューヨーク・タイムズに対し、「メガギャラリーという考え方は持続可能ではないと思っていた」とコメント。今回の再編は、業界全体が拡大競争から持続可能な運営モデルへと舵を切る兆候として注目を集めている。
