EXHIBITIONS

中村翔大「オリエント」

Shota Nakamura Untitled 2024〜25年
© Shota Nakamura. Courtesy of Taka Ishii Gallery Photo: KenjiTakahashi

 タカ・イシイギャラリー 六本木で、中村翔大の個展「オリエント」が開催される。

 中村は1987年山梨県生まれ。2011年に武蔵野美術大学を卒業し、現在はベルリンを拠点に活動している。自身の記憶や観察に加え、絵画、映画、写真などのリサーチから得た多様なイメージを再構成し、風景や人物、静物などを主題とする没入的な絵画を制作する。

 本展は、同ギャラリーでの中村の初個展となり、約12点の紙作品が展示される。水彩をもちいた制作にはこれまでも取り組んできたが、紙作品としての発表は初めての試みとなる。中村が着想の源とする車窓からの風景のイメージは、本展においても重要な役割を果たしている。統一されたサイズの紙に描かれた作品群は、見る者に風景が次々と切り替わる車中の体験を想起させる構成となっており、紙という支持体自体が異なる世界へと通じる「窓」として機能することを意図している。

 また中村は、水彩絵具の「しみ」から画面が立ち上がる感覚や、水という媒体の流動性、偶然性、透明性に着目。こうした水彩の特性は、移動しながら変化する車窓の風景と響きあうとともに、もうひとつの会場である京橋ギャラリーで発表されるペインティング作品との相互的関係も示唆している。