EXHIBITIONS

角谷紀章&遠藤仁美 二人展 「Imprinting」

 ホワイトストーンギャラリー銀座新館で、角谷紀章と遠藤仁美による二人展「Imprinting」が開催される。
 
 1993年生まれの角谷と1990年生まれの遠藤は、今回初めて顔を合わせる機会を得た。角谷は、スマートフォンが捉えた日常の断片を題材として、不明瞭なフィルターを通して見る者の想像力を掻き立て、現実の深淵を浮き彫りにしてきた。「カーテン」「摺りガラス」シリーズに加え、今年度は新たに「Fog(霧)」シリーズを発表。何気なく視覚に捉えられた光景に、都合の良い解釈が与えられがちなことを問い、人間の想念が介入する以前の、あるがままの実在を照らし出す。

 遠藤は、夢でみた風景を掘り起こし、現実と非現実の交錯を、ニュアンスに富む色彩と精緻なアウトラインで描いている。その画風は、見る者に既視感を抱かせつつも、異空間を想起させ、風景画をベースとしながらも、光や想念が様々なレベルでせめぎ合う様を描出する。最近の作品では、ノイズ的要素と動性を増し、複数の時空が林立するさまを見せている。

 ふたりが切り込むのは、現実把握の不確実性と、その茫洋たる深みだ。それはまた、無意識が人間の経験にもたらす、予定外の豊かさを示唆する。タイトルを、「刻印」や「痕跡」を意味する「imprint」から、現在進行形の「imprinting」としたのは、我々を通過する現実の数々が、命のつづく限り経験に採りこまれていくことを意味している。角谷と遠藤の絵画もまた、様々な視線を吸収し、その「リアル」の幅を拡げていく。

 梅雨と盛夏の狭間のひととき、ふたりのアーティストによる多様なリアルを堪能する機会となる。