EXHIBITIONS

鰭崎英朋

2025.05.31 - 06.25, 2025.06.28 - 07.21

柳川春葉 『誓』中編 口絵 朝日智雄蔵 後期展示

 太田記念美術館で「鰭崎英朋」が開催される。

 明治後期から昭和にかけて活躍した絵師・鰭崎英朋(1880~1968)。浮世絵師・月岡芳年の門人である右田年英に入門し、小説の単行本や文芸雑誌の口絵や表紙、挿絵を描き、広く大衆の心をつかんだ。しかしながら、その功績はこれまであまり語られてこなかった。本展では、浮世絵版画が大衆の暮らしとともにあった最後の時代に英朋がどのような活躍をしたのか、知られざる「最後の浮世絵師」にスポットをあてる。

 英朋は、小説の単行本や文芸雑誌の口絵において、妖艶さを漂わせる女性たちの姿を多く描いた。その人気は、近代を代表する美人画家として名高い鏑木清方と双璧をなすほどであった。浮世絵版画が大衆向けメディアとしての役割を終えようとしていた大正時代、英朋は木版画における美人画を手がけた最後の絵師とされる。

 また、木版画の口絵と同時に、石版画の口絵も多く手がけた英朋。今回の展示では、英朋の全貌を明らかにするため、木版画のみならず石版画についても紹介。

 さらに本展では、原画や彩色の指示をした絵(差し上げ)など、制作工程がわかる作品もあわせて展示。また、珍しい掛軸や、英朋の息遣いが伝わるスケッチも含め、計187点の作品を紹介する回顧展となる。

 これまで現存する英朋最古の肉筆画は22歳の時のものとされていたが、今回それを2年上回る20歳の時の肉筆画《上杉謙信》が発見された。第9回日本絵画協会第4回日本美術院連合絵画共進会に出品され、褒状2等を受賞した作品であり、若かりし頃の英朋の才能の片鱗がうかがえるだろう。これは、前期に初公開となる。

 なお、本展は、会期の前後期で全点展示替えが行われる。