EXHIBITIONS
リチャード・タトル「San, Shi, Go」
小山登美夫ギャラリー京橋で、リチャード・タトルによる個展「San, Shi, Go」が開催されている。
リチャード・タトル(1941〜)は、現在ニューヨークとニューメキシコを拠点に活動。絵画を解体するようにキャンバスをカットし壁に展示した「クロス・ピース」、ワイヤーとその影、ドローイングの線で構成した「ワイヤー・ピース」などの初期の代表作をはじめ、ドローイングともペインティングとも彫刻とも言えるジャンルを超えた自由な表現は、つねにアートシーンを刺激し次世代にも影響を与えてきた。
現在、83歳のタトルは、約60年のキャリアを築きながら、いまなお先鋭的な探究心を持ち制作を続けている。本展は、作家にとって同廊における7年ぶり5度目の個展となっており、最新作を発表。
作家自身「もっとも興味深いのは見えない部分です」(*1)と語るように、タトルの作品は、世界と自己を見つめ問い続ける哲学性、素材、色、言語、精神性が融合したものとなっている。そして特徴的なのは、日常的な素材に、色や線、ねじれ、しわ、質感や影など様々なニュアンスを出すことで、作家の動き、考え、制作のプロセス、時間の経過など見えない流動性やエネルギーを感じさせることだ。
また、展示自体や言葉もタトルの重要な作品である。前回の六本木の個展では作品のタイトルを紙に印刷し、床に置いてテープで貼り、それ自体を言語として自律させ作品と共存するように見せた。タトルの世界観は、普段私たちが知覚しきれない、様々な異なるカテゴリーのあいだにある豊潤な流れを表出している。
「いかなる芸術形式でも、その反対の状態を説明する必要があります。ビジュアルアーティストになるなら、視覚体験の反対である目に見えないものの可能性を説明する何かがなければなりません。」(*1)
本展の新作は、いまタトルが深い興味を持つ「数字」と概念、色についての様々な思考のプロセスを、木や紙、布、ワイヤー、プラスティック、発泡スチロールといった日常的な素材によって軽妙かつ豊かな世界観に表した作品となる。
「西洋では縦線で『1』と書き、東洋では横線で書く。若い頃は、なぜこの書き方が反対なのかと疑問に思いながらも、このことを学ぶのは楽しかった。いまなら、世界に『どうやって1と書くのか』と尋ねたり、せがんだり、懇願したりすることができる。」
「数字と概念には様々な色が入り交じっている。その色は、物事とは切り離された概念の構造であるなにかに横断する縞のようなものだ。」(*2)
また、今回木の素材が多く使われており、作家自身木に関しても言及している。
「なぜ木を使うのかずっと考えていました。以前は、木は道徳的なものだと思っていました。木が家屋に使われているのを見ると、道徳的な強さを感じます。私はこれを好まなかった。なぜなら、私は芸術が道徳から自由であることを望んでいたからだ。いま、私は興味を持っている。なぜ私たちは道徳的なのか。おそらく、KAZUは、他のことの中でも、このことを検証しているのだろうか。作品がどうなるかは、展覧会を待たなければならない。作品は、1から24まで、ちょうど数字のように確実に発展し、成長するだろう。」(*2)
*1──Richard Tuttle in "Structures" – Season 3 – "Art in the Twenty-First Century"| Art21, 2024
*2──リチャード・タトルからの本展に際してのメール、テキストより
リチャード・タトル(1941〜)は、現在ニューヨークとニューメキシコを拠点に活動。絵画を解体するようにキャンバスをカットし壁に展示した「クロス・ピース」、ワイヤーとその影、ドローイングの線で構成した「ワイヤー・ピース」などの初期の代表作をはじめ、ドローイングともペインティングとも彫刻とも言えるジャンルを超えた自由な表現は、つねにアートシーンを刺激し次世代にも影響を与えてきた。
現在、83歳のタトルは、約60年のキャリアを築きながら、いまなお先鋭的な探究心を持ち制作を続けている。本展は、作家にとって同廊における7年ぶり5度目の個展となっており、最新作を発表。
作家自身「もっとも興味深いのは見えない部分です」(*1)と語るように、タトルの作品は、世界と自己を見つめ問い続ける哲学性、素材、色、言語、精神性が融合したものとなっている。そして特徴的なのは、日常的な素材に、色や線、ねじれ、しわ、質感や影など様々なニュアンスを出すことで、作家の動き、考え、制作のプロセス、時間の経過など見えない流動性やエネルギーを感じさせることだ。
また、展示自体や言葉もタトルの重要な作品である。前回の六本木の個展では作品のタイトルを紙に印刷し、床に置いてテープで貼り、それ自体を言語として自律させ作品と共存するように見せた。タトルの世界観は、普段私たちが知覚しきれない、様々な異なるカテゴリーのあいだにある豊潤な流れを表出している。
「いかなる芸術形式でも、その反対の状態を説明する必要があります。ビジュアルアーティストになるなら、視覚体験の反対である目に見えないものの可能性を説明する何かがなければなりません。」(*1)
本展の新作は、いまタトルが深い興味を持つ「数字」と概念、色についての様々な思考のプロセスを、木や紙、布、ワイヤー、プラスティック、発泡スチロールといった日常的な素材によって軽妙かつ豊かな世界観に表した作品となる。
「西洋では縦線で『1』と書き、東洋では横線で書く。若い頃は、なぜこの書き方が反対なのかと疑問に思いながらも、このことを学ぶのは楽しかった。いまなら、世界に『どうやって1と書くのか』と尋ねたり、せがんだり、懇願したりすることができる。」
「数字と概念には様々な色が入り交じっている。その色は、物事とは切り離された概念の構造であるなにかに横断する縞のようなものだ。」(*2)
また、今回木の素材が多く使われており、作家自身木に関しても言及している。
「なぜ木を使うのかずっと考えていました。以前は、木は道徳的なものだと思っていました。木が家屋に使われているのを見ると、道徳的な強さを感じます。私はこれを好まなかった。なぜなら、私は芸術が道徳から自由であることを望んでいたからだ。いま、私は興味を持っている。なぜ私たちは道徳的なのか。おそらく、KAZUは、他のことの中でも、このことを検証しているのだろうか。作品がどうなるかは、展覧会を待たなければならない。作品は、1から24まで、ちょうど数字のように確実に発展し、成長するだろう。」(*2)
*1──Richard Tuttle in "Structures" – Season 3 – "Art in the Twenty-First Century"| Art21, 2024
*2──リチャード・タトルからの本展に際してのメール、テキストより