EXHIBITIONS

特別展

ティンティン・ウリア:共通するものごと

2024.09.21 - 2025.01.05

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 広島市現代美術館で、特別展「ティンティン・ウリア:共通するものごと」が開催される。

 ティンティン・ウリアは1972年インドネシア・テンバサール生まれのアーティストで、オーストラリア、イギリス、スウェーデン在住。地政学的、社会的な境界をインターフェイスととらえ、市民権、戦争、国家機密など、国境に関連するテーマを扱う。

 ウリアは民族的なマイノリティである中国系バリ人として育った自身の生い立ちや、移住の経験と、グローバリゼーションやグローバルな政治を織り交ぜながら、多領域にわたるインスタレーション作品を発表してきた。研究者としては近年、1965〜66年のインドネシア大虐殺に関連する米国の機密解除文書、社会政治的革における美的オブジェクトの役割に関する研究を進めている。

 ウリアの芸術的実践と研究に大きな影響を及ぼしてきたのは、民族的なマイノリティである中国系バリ人である自身の出自、さらには1965〜66年に起こったインドネシア大虐殺のときに行方不明となった祖父の存在だ。幼少期から差別を受けてきた経験をもつウリアは、人々がつくり出した境界と、その境界を維持するために人々が繰り広げる戦争に関心を抱き、多領域にわたるインスタレーションや映像作品を通して、こうした問題を伝えてきた。

 ウリアは、個人的な体験に立脚した芸術的実践を通して、身の回りにあるものごとが美的要素を獲得することで、人々をつなぐ「共通するものごと」になりえることに次第に気づくようになる。現在、こうした美的オブジェクトがいかに社会的・政治的変革に結びつくかを調査するプロジェクトを進めている。

 日本での初個展となる本展では、比較的初期から現在に至る作品を紹介。個々の記憶を含む個人的背景が、いかに集団的な行動や他者との社会的つながりへと変容しえるのか、という点に着目するウリアの芸術的試みの変遷を、作品を通して体験する機会となるだろう。