税制改革が日本のアートマーケットの成長に必須な理由。保税許可を受けたファーガス・マカフリーが語る

今年2月、東京・表参道にあるファーガス・マカフリー東京が保税蔵置場としての許可を受けた。この新たなステータスは、同ギャラリーの運営や展覧会プログラムにどのような影響を与え、また東京のアート・エコシステムにどのような変化をもたらすのか? オーナーのファーガス・マカフリーに話を聞いた。

聞き手・文=王崇橋(ウェブ版「美術手帖」編集部) 

ファーガス・マカフリー
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 ニューヨークに本拠地を置き、東京・表参道にもスペースを持つギャラリー、ファーガス・マカフリー。今年2月、東京のスペースが保税蔵置場としての許可を受けた。これにより、同ギャラリーは日本国外をベースとするアーティストの作品を国内で展示する際に、10パーセントの輸入消費税を前払いする必要がなくなった。

 この取り組みは、ギャラリーのビジネスや今後の展覧会プログラムにどのような影響を与えるのだろうか? また、東京のアート・エコシステムにはどのような変化をもたらすのだろうか?

 今年、ペースなどの国際的なギャラリーは東京にスペースをオープンすることを予定しており、日本のアートマーケットはますます注目が高まっている。 ファーガス・マカフリー東京の保税許可の意義や、東京が次の国際的なアートハブになるためにすべきことなど、ファーガスに話を聞く機会が得られた。

「ビジネスの本質を完全に変える」保税許可

──ファーガス・マカフリー東京が保税蔵置場に許可されたことの意義についてお聞かせください。この新しいステータスは、ギャラリーの運営や東京での展覧会企画にどのような影響を与えますか?

 日本にとっても、またコマーシャルギャラリーや国際的なアーティストにとっても、大きな前進だと思います。メリットは2つあります。

 ひとつ目は資本面です。従来は、作品輸入の際に消費税相当のデポジットを預ける必要がありました。そのため、アンゼルム・キーファーのような数百万ドル規模の展覧会を開催する場合は、作品総額の10パーセントを事前に国に納める必要があるので、多くのギャラリーは開催を躊躇してしまいます。保税蔵置場許可によってその10パーセントのコストがなくなったことは非常に重要です。

 もうひとつは、海外アーティストが日本で意欲的な展覧会を開催することがより奨励されるようになるということです。周知のとおり、海外アーティストは日本で展示することを好みます。その際、先ほどのデポジットが非常に大きなハードルでしたから。 

アンゼルム・キーファー個展「OPUS MAGNUM」(2024年4月2日〜7月13日、ファーガス・マカフリー東京)の展示風景より
©Anselm Kiefer. Courtesy of Fergus McCaffrey

──保税蔵置場許可により、これから意欲的な展覧会を新たに予定されていますか?

 もちろんです。我々は、ロバート・ライマンやジャスパー・ジョーンズ、アンゼルム・キーファー、リチャード・セラなど、非常に野心的な展覧会を一貫して東京で開催してきました。これは、今後も継続していきます。また、この新しいステータスはより大規模なプロジェクトを可能にしました。

──美術品輸入に関する日本の税制とは、そもそもどのようなものなのか、簡単にご解説いただけますか?