最低限知っておくべき美術と相続税の話

いつか訪れる人の死。人の死は相続の発生も意味する。来ることが分かっていても死後に発生する相続について真剣に考えたことがない美術家も少なくないだろう。今回は最低限知っておきたい相続税のポイントについて税務分野を取り扱う徳田貴仁弁護士に聞いた。

聞き手・文=木村剛大

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はじめに

木村剛大(以下、木村) まず基本から伺いたいと思います。相続税とはどういう経緯でできた制度なのでしょうか。

徳田貴仁(以下、徳田) 相続税法の成立から述べます。相続税法の課税根拠について、現在では資産の再配分や格差是正等に求める見解もあるようですが、そもそも、相続税法は、1904年、日露戦争の戦費調達財源として立法(明治38年1月1日法律第10号)され、その際、臨時的な非常特別税でなく、恒久的な単独税法とされました。この旧相続税は、旧民法所定の日本特有の家族制度を反映し、家督相続と遺産相続により構成されました。

 その後、日中戦争、第2次大戦後の占領下での改正を経て新民法家族編が施行され、対日講和条約が発効した後の1958年の改正が現在の相続税法の枠組みをなしています。以後、税率の累進性の低減や評価方法の特例の増加、基礎控除額の縮小、国際課税、納税義務者の拡大等で大きな変容を遂げました。とくに2003年の相続時精算課税制度導入、09年の事業承継税制導入は、大きな変化でした。

美術品の相続と相続税額の計算方法