「草間彌生 版画の世界―反復と増殖―」(京都市京セラ美術館)開幕レポート。版画でたどる草間「反復と増殖」の美学
京都市京セラ美術館で、草間彌生の版画芸術に焦点を当てた展覧会「松本市美術館所蔵 草間彌生 版画の世界―反復と増殖―」が開幕。初期から近年までの代表作約330点が前後期に分けて展示され、草間の創作の軌跡をたどる貴重な機会となっている。

京都市京セラ美術館にて、「松本市美術館所蔵 草間彌生 版画の世界―反復と増殖―」展が開幕した。会期は9月7日まで。
京都で草間彌生の個展が開催されるのは、2005年の京都国立近代美術館以来、約20年ぶりであり、また京都市京セラ美術館(旧・京都市美術館)においては、90年以上にわたるその歴史のなかで初の個展開催となる。
本展は、世界最大級の草間コレクションを誇る松本市美術館が所蔵する版画作品に、作家蔵の作品を加えた約330点を、前期(4月25日~6月29日)・後期(7月1日~9月7日)に分けて紹介するものである。すべての作品は会期途中で入れ替えられ、草間が長年にわたり手がけてきた版画芸術の全貌が展観される。
展示は全6章構成となっており、第1章「わたしのお気に入り」では、草間が幼少期より抱き続けてきたイメージや、日常生活からインスピレーションを得たモチーフが取り上げられる。レモンスカッシュなど意外性のある題材も紹介され、水玉や網目に留まらない、草間表現の源泉に迫る章となっている。



とりわけ注目を集めるのが、2014年に制作された「富士山」の木版画である。草間自身が富士山のふもとを訪れ、現地で得たインスピレーションをもとに描かれたキャンバス作品を原画とし、浮世絵木版の伝統を継ぐアダチ版画研究所の依頼により版画化されたものだ。縦194センチ、横およそ6メートルの巨大キャンバスをもとに、精緻な木版で再現された本作には、1万4000個以上の水玉が職人の手作業によって刻まれており、草間の筆致が印刷にもかかわらず鮮やかに伝わる。

また、この木版作品は、同じ版から異なる色で刷り分けるという版画ならではの技法によって、草間が描いたオレンジ色の富士山を含めた7種のカラーバリエーションが制作されている。