2025.12.6

芸術と技術が交差する場所。The Terminal KYOTOで「石に話すことを教える──生の〈技術〉」展が開催

文明のはるか以前から存在し続ける「石」を媒介に、10名の作家が現代における知と技のあり方を問い直す展覧会「石に話すことを教える──生の〈技術〉」が、京都のThe Terminal KYOTOで開催される。会期は12月12日〜27日。

石橋友也 Self-reference Microscope 2025
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 京都・四条のThe Terminal KYOTOにて、展覧会「石に話すことを教える──生の〈技術〉」が12月12日〜27日に開催される。

 本展は、キュレーターの大久保美紀が企画し、赤松正行、石橋友也、井上佑吉、後藤朋美、ジダーノワ アリーナ、杉浦今日子、福島あつし、堀園実、ジャン=ルイ・ボワシエ、フロリアン・ガデンの10名が参加するグループ展である。

 展覧会タイトルは、アメリカの作家アニー・ディラードによる著作『石に話すことを教える』(1983)に由来する。文明の黎明期から人類とともにあり、私たちのはかない生を超えて長い時間の記憶を宿してきた「石」。本展はその象徴的な存在を手がかりに、現代における「技術(わざ/知/芸)」とは何か、その根源的な意味を問い直す。高度なテクノロジーが発達した今日であっても、人間は世界を完全に「人間化」することはできない──その限界を見つめつつ、生と物質のあいだに立ち現れる新しい関係性を探る試みである。

 参加作家は、メディア・アート、バイオ・アート、写真、映像、彫刻、刺繍、絵画など異なる表現領域で活動しており、異なる方法論をもつ彼らの作品群は、生の営みに内在する「技術」を多角的に照らし出す。

赤松正行 タレスの刻印 2025

 赤松正行《タレスの刻印》は、古代ギリシャの哲学者タレスが見上げた星々の軌跡を想像し、時間と観測行為そのものを可視化する。石橋友也《Self-reference Microscope》は、河川で採取された人工物を含む廃棄物で顕微鏡を自作し、その装置によって川の生態系を観察するという自己言及的な試みを提示する。

 後藤朋美《Trust Thy Scars》は、治癒や再生に関する現代的な問題を、氷や土といった変容する物質を用いた芸術実践によって考察する。農業に従事する福島あつしは、新作《ぼくは夏の畑で生き物たちと野菜を奪い合う》において、自然と人間のあいだに生じる生存のダイナミクスをとらえる。

福島あつし ぼくは夏の畑で生き物たちと野菜を奪い合う 2025

 また、フロリアン・ガデンのキャンバス作品《oe》は、人間中心主義的な思想を超え、環境と私たちがいかに再び関係を結び直すことができるのかを問う“ホロビオント”の視点を提示する。

 本展は、人新世における根本的な問いとしての「技術」を、科学や工学の枠組みとは異なる「生に根ざした力」としてとらえ直す試みであり、多様な世代・文化的背景をもつ作家たちが、アートを通じて文明のあり方と生命の技法を再考する場となる。

 会期中には、出展作家が登壇するオープニングトーク(12月12日)と、ゲストを招いたクロージングトーク(12月27日)も開催され、作品理解を深める機会が提供される。