「フォークロア」に着目してきた背景に焦点を当てる。CAF賞2023最優秀賞受賞者、菅野歩美の個展が開催
東京・六本木の現代芸術振興財団で、「フォークロア」に着目した作品を制作する菅野歩美の個展が開催される。会期は5月29日~6月28日。

東京・六本木の現代芸術振興財団で、「フォークロア」に着目した作品制作を行う菅野歩美の個展「Boring processたいくつな掘削かてい」が開催される。会期は5月29日~6月28日。
菅野歩美は1994年東京都生まれ。2025年に東京藝術大学大学院美術研究科博士後期過程を修了し、現在東京を拠点に活動。どこの土地にも存在する「フォークロア」と呼ばれる土地にまつわる物語や伝説、幽霊譚のリサーチを行い、人々によって紡がれてきたその背後にある歴史や個人の感情を想像することで生まれる「オルタナティヴ・フォークロア」を映像インスタレーションによって表現する。おもな個展に「明日のハロウィン都市/Halloween Cities of To-Morrow」(2023、東京)などがある。
本展では、菅野が「フォークロア」をテーマにしてきた背景のひとつである、祖父母との関係を発端としている。菅野の祖父の閉業した土建屋の事務所から出てきた、ボーリング調査の残骸や道具などの整理作業を行うなかで、知らなかった過去や、忘れていた記憶を掘り起こす経験をしたことが菅野の制作につながっている。
菅野は本展に際して次のようにコメントしている。「こうしたモノや記憶を掘り起こす終わりの見えない整理作業の過程は『退屈(boring)』である一方で、地盤調査のための『掘削(boring)』のように、家庭の長い年月の堆積物を掘り起こし、社会の大きな流れのなかで見えなくなっていた個人的な時間の層を可視化する行為でもある。「たいくつな掘削かてい」は、私の家庭にまつわる物理的な整理と記憶の整理が交差する場であると同時に、そこに訪れた鑑賞者もまた、自らの記憶や歴史を掘り起こし、思いがけず退屈ではない時間を過ごすことになるかもしれない」。


本展では関連イベントとして、ジャグリングパフォーマーの結城敬介を迎えて、トークイベントを6月20日18:00~19:00で開催予定。事前予約制となっている。
なお、この展覧会は菅野が受賞した「CAF賞2023最優秀賞」の副賞として行われる。CAF賞は、学生を対象に若手アーティスト育成を目的として2014 年より毎年実施しているアートアワードで、最優秀賞受賞者には賞金100万円のほか、副賞として個展開催の機会を提供している。
