2025.7.28

シャネル文化基金と上海当代芸術博物館による新たな「劇場」。演劇、パフォーマンス、美術展の枠組みを越える実験

上海当代芸術博物館とシャネル文化基金が共同で主催する「新文化プロデューサー」プロジェクト。その第3弾「劇場」では、アーティスト・コレクティブ「マーティン・ゴヤ・ビジネス」の企画が採択され、展覧会は10月8日まで開催されている。

展示風景より © CHANEL © 上海当代芸術博物館
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 上海当代芸術博物館(Power Station of Art、通称「PSA」)とシャネル文化基金が共同で主催する「新文化プロデューサー」プロジェクトの第3弾「劇場」が、10月8日まで同館1階で開催されている。

 「新文化プロデューサー」は2021年に始動し、第1回「クラフトの再興」(2022〜2023年)、第2回「アクティブ・アーキテクチャ」(2023年)に続き、今回は「劇場」というテーマのもと、展示とライブパフォーマンスを融合させた文化的実験が展開されている。

初日のパフォーマンスの様子 © CHANEL © 上海当代芸術博物館
初日のパフォーマンスの様子 Courtesy of Martin Goya Business. Photo by Zhang Yupai

 本プロジェクトに採択されたのは、2017年にアーティストの程然(チョン・ラン)と大綿(ダーミエン)によって設立されたアーティスト・コレクティブ「マーティン・ゴヤ・ビジネス(馬丁・戈雅生意)」が企画した《正午、荒原、息流、瓦舍、廃墟、劇場》。演劇、パフォーマンス、美術展といった従来の枠組みを越え、日常と非日常が交錯する「詩的劇場」が会場全体で繰り広げられる。

 開幕初日の7月11日には、150人のアーティストによる8時間にわたるパフォーマンスが実施され、その全貌が映像として記録された。これらの映像は、会期中を通じて会場内で鑑賞可能である。

初日のパフォーマンスの様子 Courtesy of Martin Goya Business. Photo by Zhang Yupai
初日のパフォーマンスの様子 © CHANEL © 上海当代芸術博物館

 展覧会は5つのセクションから構成されている。導入部「荒原」では、パフォーマーたちのエネルギーが蓄積され、様々な状況がめまぐるしく変化。観客もその流れに巻き込まれていく。「経緯」では、77名(組)のアーティストによる手紙、日記、詩、写真などが展示され、個人的な記憶や未完の思いが綴られる。「影像」では、2000年前後生まれの若いアーティストたちが、メディア論、テクノロジー、エコロジー、記憶といったテーマに挑み、世代独自の視点を提示する。

「荒原」の展示風景より © CHANEL © 上海当代芸術博物館
「経緯」の展示風景より © CHANEL © 上海当代芸術博物館
「影像」の展示風景より © CHANEL © 上海当代芸術博物館

 「瓦舍(がしゃ)」は感情の交差点として、観客とアーティストが予期せぬ相互作用を生み出す場となり、「廃墟」では都市化が進むなかで消えゆく風景が描写される。アーティストたちは絵画という行為を通じて、記録されることのなかった物語を浮かび上がらせている。

「瓦舍」の展示風景より © CHANEL © 上海当代芸術博物館
「廃墟」の展示風景より © CHANEL © 上海当代芸術博物館

 初日のパフォーマンスは、演劇、音楽、ダンス、ライブ・ペインティングなど多様な形式で行われた。会場では、その記録映像が複数のスクリーンで非線形的に上映されている。映像は会期中にも更新され、変化を続ける空間として展開される。また、パフォーマンスに使用された小道具が展示空間に点在し、来場者の想像力を刺激する演出となっている。

 演者・観客・空間の関係性を再構築する試みであり、文化の実験場としての「劇場」をぜひ会場で目撃してほしい。