2025.6.24

ゴッホを学ぶためのおすすめ映画&テレビ番組8選

今年から3年をかけて開催される「大ゴッホ展」をはじめ、2025年にはいくつかのフィンセント・ファン・ゴッホの展覧会が予定されている。せっかくならば、展覧会をより楽しむための予習・復習におすすめの本や映像を3回に分けて紹介。第2回はおすすめの映画・テレビ番組をセレクト。

文=坂本裕子

映画『ゴッホ〜最期の手紙〜』より © Loving Vincent Sp. z o.o/ Loving Vincent ltd.

 度重なる失恋と挫折、画家を目指すも作品は評価されず、アルルでのゴーギャンとの確執の末に起こした「耳切り事件」、精神病院への入院からピストルで自らを撃ったとされるその死まで、ゴッホの生涯は、わずか10年ほどの間に残したおよそ2000点にのぼる作品と900通におよぶ手紙とともに、ドラマに満ちあふれており、物語からドキュメントにいたる多くの映像が生み出されている。現在サブスクリプションサービスで観られるものからいくつか紹介する。

映画

 ゴッホの死には謎が多い。自身を撃ったとされるリボルバーや携えていたはずの絵を描く道具や作品も見つかっていない(拳銃については「とされる」ものが近年オークションに出たようだ)。2011年にはアメリカの伝記作家コンビが他殺説をとなえる『ファン・ゴッホの生涯』を発表して世界で話題になるも、ファン・ゴッホ財団は公式には認めていないそうだ。最近はこの他殺説で描かれる映画もある。

『炎の人ゴッホ』(1956年、アメリカ)

 アーヴィング・ストーンの伝記小説をカーク・ダグラス主演で映像化した作品。ゴッホが自身の画風を見出すアルル時代以降の描写を主とする映画が多いなかで、本作はボリナージュの炭鉱で伝道者として活動するシーンをはじめ、オランダ時代が比較的丁寧に描かれる。アルルでのゴーギャンとのやり取りでは、孤独を恐れるゴッホの心情を痛々しく描写する。ゴーギャンをアンソニー・クインが好演、オスカーの助演男優賞を受賞している。原題は『Lust for Life』。手紙に記載されている内容が随所に反映されており、あまりにも日本に流布してしまった『炎の人ゴッホ』よりはふさわしい。

配信:U-NEXT 

『ゴッホ:天才の絵筆』(2009年、フランス)

 ファン・ゴッホ美術館の研究者が美術館地下の保存庫でゴッホの手紙を解読しながらその生涯に迫っていくドキュメンタリー映画。ゴッホのデッサンや油彩画を描いていくように作られたCG映像は、画家がどのように描いていったのかを教えてくれて興味深い。はじめてIMAX技術を使った美しいアルルやオーヴェール=シュル=オワーズの風景美もすばらしく、エンドロールでは、本作に使用されたゴッホの作品が一覧で出てきて切なさを演出する。

配信:Amazon Prime Video