本村綾「つづくよ」

　和田画廊で本村綾の個展「つづくよ」が開催される。
　本展で和田は銅版画をはじめ、紙版画やモノタイプなどの版表現を組み合わせた新作を発表している。とくに紙を版材とした紙版画への取り組みは今回が初となり、作家にとっても表現の新たな地平を切り拓く機会となっている。

　モノタイプは昨年、和田画廊での個展にて4点を発表し、今展ではより実験的に、水彩やアクリルなどの水性絵具も取り入れながら、アルミ板への描画と刷りの過程に新たな表情をもたらしている。また、そこへパステルや色鉛筆による描き込みを重ねることで、画面との対話がより親密なものへと進化させた。
　
　本村の作品には、伝統的な銅版画の技法に支えられた確かな手仕事と、現代を生きる感覚、そしてどこか懐かしさがやわらかく同居している。今回の展示では、そうした作家の生み出すやさしい時間の流れに、新しい色彩と軽やかさが加わり、これまでにない物語が静かに立ち上がりそうだ。

　展覧会タイトル「つづくよ」には、日々描き続け、つくり続けることへのささやかな祈りと、移転後間もない本展を皮切りに、ここからまた歩みを重ねていく和田画廊の想いも重ねられている。