EXHIBITIONS

生活のデザイン ハンセン病療養所における自助具、義肢、補装具とその使い手たち

国立ハンセン病資料館 2階 企画展示室
2022.03.12 - 08.31

展示室

囲碁を打つ[駿河療養所] 1955

ブリキの義足[全生病院(現多磨全生園)] 年不祥

茶缶[多磨全生園] 年不祥

オーダーシューズ[多磨全生園] 2019

 国立ハンセン病資料館が企画展「生活のデザイン ハンセン病療養所における自助具、義肢、補装具とその使い手たち」を開催している。

 ハンセン病療養所の患者、回復者は、末梢神経障害による生活動作の不自由がありながらも、その人らしく暮らすために、様々な道具を活用してきた。例えば、食事などの日常生活上の動作を助ける自助具、自分で歩くための義足、手足を保護しながら必要な動作を可能にするための補装具などの道具がある。

 1950年代以前、ハンセン病隔離政策のもと療養所の予算は十分でなく、多くの労働が患者によって担われていた。古くから伝わるブリキの義足や、取っ手のついた鉋(かんな)などは、知覚神経や運動神経の麻痺をかかえながら、患者作業や日々の暮らしを担ってきた入所者の苦難の歴史をいまに伝える。

 その後、作業療法士や義肢装具士が着任するようになってからは、知覚を失い、思うように動かせなくなった患者や回復者の手足を保護しつつ、使い手が叶えたい生活を実現するにはどうしたらよいか追求され、使い手とつくり手の細やかな対話を通して、一人ひとりの生活のデザインと呼ぶにふさわしい道具が多数つくられるようになった。

 本展ではハンセン病療養所でつくられ、使われてきた自助具、義肢、補装具の実物、関連する文献、映像、写真など約280点の資料を紹介し、それら道具の使い手とつくり手の創意工夫にあふれた姿を伝える。

 会場は、「療養所における自助具、義肢、補装具」「歩くための道具」「手で使う道具」「それぞれの人の道具」の4つのコーナーで構成。さらにトピックとして「洗面と用便」「失明と自助具」「病棟とセンターにて」の小テーマを取り上げ、療養所における自助とケアなどについても紹介している。

 会期中には、国立療養所多磨全生園の義肢装具士を招いた講演会など、オンラインでのギャラリートークも実施(詳細は公式ウェブサイトへ)。なお同館のYouTubeチャンネルでは、企画展「生活のデザイン」について紹介するミニ動画を公開している。

 本展覧会を通して、ハンセン病問題への理解を深めると同時に、障害とともに生きる人々が自らの可能性を追求してきた歩みへの関心を高める機会としたい。