エルヴィン・ヴルム インタビュー。「私たちは皆、ある時代における、ある社会の生産物でしかない」
エルヴィン・ヴルムの美術館における日本初個展「エルヴィン・ヴルム 人のかたち」が、青森の十和田市現代美術館で開催されている。本展に際して来日したヴルムに、彫刻を通じて表現したいこと、そしてアートに対する考えについて話を聞いた。

その作品はなぜユニークに見えるのか
──十和田市現代美術館の開館時より屋外に展示されているヴルムさんの《ファット・ハウス》《ファット・カー》は、美術館のアイコンのひとつとして市民に愛されてきた作品です。太った家や車の姿はユーモアに溢れており、美術の知識がない人でも、一目見ただけで「おもしろい」と感じるものですが、同時にヴルムさんは「彫刻」という表現を分解しながら、時代や社会の構造についての問いかけをしてきました。こうしたユーモアを感じさせる造形と鋭い批評性はなぜ両立しているのでしょう。
作品にユーモアを与えようということは、まったく意識していません。私にとって重要なのは現実の不条理さです。例えば《ファット・ハウス》や《ファット・カー》は、まさに現代の社会の問題を扱っている。限りない成長を目指し、より豊かに、より多くのものを得ようとし続ける現代社会について言及している作品です。このように、私がやっていることは、現代社会の様々な問題を彫刻的にとらえ、働きかけるということです。

私は芸術の自由を信じているのですが、いっぽうで芸術は、政府、宗教などあらゆる勢力が自らの目的に利用してきたものでもあります。保守派から革新派、ファシストから社会主義者まで、アートは各勢力の目的のために使われてきた。私からするとそれらはすべてが間違っていてナンセンスですし、そういった矛盾、ナンセンス、ばかばかしさを作品を通して表現している。私の作品にユーモアを感じるのは、そのような現実の不条理さが表出しているからなのでしょう。